ところで、v6プラスは、今となってはユーザのメリットは薄れてきた
v6プラスは、プロバイダの事情で導入されたものの、IPv4のPPPoE接続で1Gbpsの接続速度が得られるため、我々エンドユーザにはメリットがありました。
ところが最近、NTT西日本のフレッツ光ネクスト・隼、NTT東日本のフレッツ光ネクスト・ギガスマートが開始され、通常のPPPoE接続のIPv4でも1Gbpsの接続環境が提供されるようになりました。
となると、v6プラスはグローバルアドレス共有(キャリアグレードNAT)で通信の制限がある分、隼やギガスマートに比べると不利でしかありません。
(HGWの設定が簡単、というメリットはあります)
これからフレッツに契約される方は、はじめからギガ・スマートなどを選べばよいわけです。
v6プラスへの素朴な疑問
という背景は別として、v6プラスに対しては頭の隅に素朴な疑問が常にありました。
ISP、いらなくなるんじゃない?
v6プラスは、IPoEのネイティブ接続が可能なVNE(Virtual Netrwork Enabler)という特殊な事業者しか提供できません。
NTTのNGN網の技術的な制約で、現在はVNE事業者は3社しか作れないのだそうです。今後改善して、15社くらいには拡大すると宣言しています。3社は、JPNE、BBIX、インターネットマルチフィードです。(そういえば宣言してから2年も経つのに、拡大したという話をききません)
v6プラスはJPNEのサービスです。@niftyやBiglobeは、VNEであるJPNEの設備を使ってv6プラスを提供しています。
今のところ、JPNEはv6プラスをエンドユーザに直接提供していません。あくまでISPへの卸です。
v6プラスを提供するのはVNE。プロバイダは単なる契約窓口。
以下は私の理解です。違っていたらご指摘いただきたい。
v6プラスでは、VNEの機器でIPv4通信を振り分け、インターネットに接続します。
@niftyやBiglobe(ISP)でv6プラスを契約しているにもかかわらず、実際に通信サービスを提供しているのはVNEのJPNEなのです。
ISPは単なるv6プラスの契約窓口なんです。
つまり、IPv6もIPv4もインターネット接続はJPNEにおんぶにだっこ。
ISPの仕事はエンドユーザの獲得、顧客管理、請求です。設備は持たず、サービスだけ提供する。販売代理店のようなものです。
v6プラスは金のないISPのIPv6普及促進策
VNEやISPはこの状態をどう語っているか。
総務省の公開情報で、これに関する情報に行き当たります。
IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会
平成21年から開催されている総務省の研究会で、
「IPv6への移行やその普及促進を図るため、行政を含む関係者が取り組むべき具体策等について検討を行うことを目的として」
発足したそうです。平成25年7月の
「IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会「第二次プログレスレポート」の公表」
を最後に、このページは更新は停止しています。
キャリア(通信事業者)、プロバイダ、コンテンツ事業者の各社を呼んで各社の取り組みなどを説明させています。出席者の説明資料などは、このHPで公開されており、だれでも閲覧できます。
これを読むと、v6プラス導入の目的がIPv6対応のためのプロバイダの負担を減らすこと、ひいてはIPv4アドレス枯渇対策であることがわかります。
JPNEの説明
上記ページの第23回配付資料の、資料23-4、P.5で、v6プラスサービスの開始する理由として、IPv6普及のためであると説明しています。
二重コスト問題:長期間IPv4/IPv6両方の設備維持が必要(トンネル方式・ネイティブ方式共通の課題)
多くのISPがIPv4アドレスの在庫を持っており、IPv6の必要性が低下→だからv6プラスを提供します
@niftyの説明
@niftyのv6プラスに関する報告は、第24回の資料24-5、P.5からです。v6プラス導入の意図を以下のように説明しています。
IPv6対応のための投資(ダブルコスト)を抑えるたい
→だからJPNEのv6プラスに乗っかります
JPNEとISPは協調してうまくやっていきます、お役所さん応援してね、って感じですね。
ということで、「v6プラス」という取り組みは、ISPの台所事情を考慮したIPv6普及促進策という位置づけであることがわかります。
1Gbpsの高速通信が副産物であることもわかります。v6プラスを実現したら、たまたま1Gbpsになっただけということになります。
ISP事業者数がめちゃくちゃ多いのが気になるが・・・
彼らの言い分は、VNEが設備に集約投資し、ISPは顧客管理とサービス窓口、付加価値の提供にそれぞれ役割特化する、ということです。でなきゃIPv6は普及が進みませんよ、と。
(特に、JPNEはISPが出資しているので、宿命的に棲み分けを目指すしかないですが。)
VNEでの投資集約は規模のメリットが出れば、コスト削減・料金低減につながるでしょう。ユーザの恩恵となると思います。
得意分野ごとに各プレイヤーが効率的に仕事を進めていけばそれなりに合理的な形なのかもしれません。
この考えを延長すれば、ISPの業務もVNEに集約してしまえばもっとコストは落ちるはずです。(研究会はあくまでIPv6普及促進が論点なので、この話に至るはずもないですが。)
そうならないのは、餅は餅屋で互いの参入障壁が高いのか、既存の枠組みを壊さない配慮があるのか。
どこのISPも提供しているサービスにそれほどの違いは見えないのに星の数ほどISPが存在できています。競争環境の整備と称した業界保護行政の香りがしなくもない。
そういえば よく考えたら、もともと存在している、一次プロバイダ、二次プロバイダの構造も同じような枠組みですね。
いろいろと疑いはあるのですが、日本のインターネット接続料金は世界的に低廉なレベルと言われていますので(確認したわけじゃないですが)、うまくいっているということなのでしょう。
ISPの数だけ雇用が生まれているわけで、日本社会にも優しい。
というわけで、私の素朴な疑問に対して現時点では、VNEとISPの機能の特化・棲み分けと理解することにして、目くじら立てないことにします。(笑)
今後のVNE枠の拡大や、他のVNEの動きなども合わせてウォッチしていきたいと思います。
それにしても、これからのISPの仕事ってのは、あまり楽しくなさそうですね。